美しい色をしたアオバト。「実際に自分の目で見てみたい!でも一体どこにいるの?」そういった疑問を持たれている方は多いのではないでしょうか。
この記事を読めば、アオバトが暮らしている地域や環境についての基本を知ることができます。
アオバトの分布域
アオバト(White-bellied green-pigeon)は日本、中国、台湾に生息するハトです。
日本では九州、四国、本州で繁殖をします。北海道では6月ごろ見られ、秋になると本州へと戻ります。沖縄にはアオバトはいませんが、「ズアカアオバト」が生息しています。
※ズアカアオバトとは……南西諸島に生息するハト。台湾に生息する亜種が、頭が赤いためこの名がついている。アオバトとよく似ているが、やや体長が大きい。アオバトは海水や鉱水を飲む性質があるが、ズアカアオバトはそういった行動は記録されていない。
鮮やかな青いくちばしにオリーブ色の羽、翼の赤色と、日本の鳥っぽくない色をしているため、南国の鳥だと勘違いされることも多いのですが、アオバトは立派な日本の鳥です。
アオバトが好む環境
アオバトは広葉樹が多い森林で暮らす鳥です。里山というよりはさらに山深い場所にいる鳥なので、かつては「ヤマバト」と呼ばれていたこともあるそうです。
普段は数羽から数十羽の群れで過ごし、樹上で木の実や芽などを食べ、羽を休ませていることが多い鳥です。緑で生い茂った木々の中にいると、アオバトの緑色の羽はカモフラージュとなり、見つけるのは容易ではありません。
冬期になると平地の林や公園に移動し、人里に姿を見せることがありますが、基本的に警戒心が強く、生活の大部分を樹上で過ごすため、目にする機会はとても少ないレアな鳥です。
アオバトが見られる季節
アオバトは一年中日本にいる鳥ですが、上記のような理由で、実際に野外で姿を見ようと思うと、なかなか難易度が高い鳥といえます。
しかし、季節と場所を選べば、アオバトを見るチャンスは高まります。
それは、春から秋にかけての時期。アオバトはこの時期にだけ、「鉱泉」や「海水」を飲む性質があります。普段は木々に隠れて姿が見えないアオバトも、この時期だけは地上に降りてゴクゴクと水分を補給するのです。
また、冬期にも、平地の公園でどんぐりなどを地上で採餌する姿が見られることがあります。
有名なアオバト飛来地
神奈川県大磯町「照ヶ崎海岸」
神奈川県大磯町の照ヶ崎海岸には、毎年5月初旬~10月頃、海水を飲みにアオバトたちが海にやってきます。
ピークは7月・8月ごろで、梅雨明け後、天気の良い日に多く飛来します。時間は早朝、日の出の頃が一番数が多く、夕方ごろまで見ることができます。
海岸の岩にたまった海水を飲む様子を観察することができますが、吸飲しているアオバトまでは距離があり、当然近づくと逃げるため、双眼鏡を持っていくことをおすすめします。
また、夏の暑い時期なので熱中症・日焼け対策もお忘れなく!
大磯町観光情報Webサイト
http://www.town.oiso.kanagawa.jp/isotabi/look/shizen/aobato.html
引用元:神奈川県HP 大磯町照ヶ崎海岸のアオバト観察会 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ie2/tours/diary/20190803-nh.html
大磯のアオバトに関しては、平塚・大磯をフィールドに活動するアマチュア・バードウォッチンググループの「こまたん」がとても詳しく、平常時であれば探鳥会も催されます。Webサイトにはアオバトに関するコラムがたくさんあるので、そちらもお勧めです。
群馬県上野村「野栗沢温泉」
群馬県上野村の野栗沢温泉の源泉付近には、毎年5月~10月中旬ごろまでアオバトが鉱泉を飲むために群れで飛来します。
源泉付近は私有地であるため、アオバトを見るにはガイドツアーへ申し込む必要があります。有料ですが、観察小屋があり、双眼鏡無しでも見えるほどの近さで見ることができます。また、専門のガイドが付くので、アオバトをよく知る人の話を直接聞くことができます。
北海道小樽市「恵比須島」
北海道小樽市「恵比須島」には、毎年アオバトが数百羽、海水を飲みに飛来します。ピークは7月・8月ごろ。早朝と夕方が数が多いそうです。観察には双眼鏡をお忘れなく。
この場所は、鳥類研究家の佐々木勇さんにより、世界で初めてアオバトが海水を飲む習性が映像で記録された歴史的な場所でもあり、アオバトは「市の鳥」に指定されています。
小樽市Webサイト
https://www.city.otaru.lg.jp/docs/2020120700879/
福井県大野市「鳩ヶ湯温泉」
福井県大野市の鳩ヶ湯温泉では、鉱水を飲みにアオバトが訪れます。
「鳩ヶ湯温泉」という名前は、昔、温泉で傷を癒すために山鳩(アオバトのこと)が水浴にきたことが由来だそうです。現在でも早朝、その様子が見られるそうです。アオバトを宿のセールスポイントとして全面に押し出しているようでは無いので、アオバト目当てで宿を利用したい方は、一度連絡をとることをお勧めします。
鳩ヶ湯温泉Webサイト
https://www.hatogayu.jp/
京都府京都市「京都御苑」
秋から冬の間は、京都府京都市の京都御苑内にアオバトが来ることが知られています。餌の少ない時期、園内の地上に落ちたドングリなどを食べるためです。
普段は木の葉陰に隠れて様子をうかがい、危険が無いと判断したら群れで地面に降りてきます。いつ地上に降りてくるのかわからず、降りても危険を感じたら飛び去ってしまうため、見るためには一日観察する根気が必要でしょう。
野鳥を撮影するアマチュアカメラマンにも有名な場所です。撮影される際は、他の人の迷惑にならないようマナーを守りましょう。
京都御苑Webサイト
https://fng.or.jp/kyoto/
アオバトの生息地、見られる季節、飛来地まとめ
- アオバトがいる国:日本、中国、台湾
- アオバトが生息する地域(日本):九州、四国、本州、北海道
- アオバトが繁殖する地域(日本):九州、四国、本州
- アオバトが暮らす環境:広葉樹林の山、森林
- アオバトが見られる季節:5月~10月頃の海水や鉱泉を飲む時期、冬期平地に下りてきてドングリなどを食べる時期が狙い目
- 有名なアオバト飛来地:小樽市「恵比須島」、群馬県「野栗沢温泉」、神奈川県「照ヶ崎海岸」、福井県「鳩ヶ湯温泉」、京都府「京都御苑」
- アオバトの生息地である森の中で、間近に見たい場合は……
群馬県上野村「野栗沢温泉」がオススメ!
- 普段森の中にいるアオバトが、海岸を飛び交う姿を見たい場合は……
神奈川県大磯町「照ヶ崎海岸」がオススメ!
おわりに
私が初めてアオバトを見たのは、東京都の奥多摩を散策していた時です。頭上に鳥の気配を感じて見上げたら、偶然アオバトが枝にとまっていたのです。はっきりとアオバトだとわかる独特なおしりの模様が目に焼き付き、それ以来妙にアオバトのことが気になっていました。しかし山に潜むアオバトをピンポイントで探すのは、この記事にも書いたように至難の業!
その後、群馬県上野村野栗沢温泉「すりばち荘」の存在を知り、初代当主自らアオバトが来る鉱泉へ案内してもらいました。
バードウォッチングというと散歩しながら自分で探すイメージがあったのですが、ここは探しに行くのではなく、観察小屋に入ってアオバトのほうから来るのを「待つ」というスタイル。アオバトが集まる鉱泉がある、この場所ならではのスタイルに目から鱗。
何より驚いたのは、観察小屋から双眼鏡無しでも観察できるというその近さ!数十羽のアオバトが目の前に降りてくる様子を生で見ることができて、大満足の迫力でした。
現在、その場所は「アオバトガイドツアー」とリニューアルし、2021年6月より運営を開始しています。私も、縁あってお手伝いもさせてもらっています。宿泊費とガイド代はかかりますが、興味ある方は是非参加してみてください。(「アオバトの谷PROJECT」スタッフ)
コメント