春夏秋冬・アオバトは何を食べているのか?

アオバトはヤマザクラの実など果実食の傾向が強い鳥です。警戒心が強く野外ではなかなかお目にかかれない鳥ですが、彼らが好む植物とそれを食べる時期を知っていれば、出会うチャンスもぐっと増えることでしょう。

この記事では、四季折々、アオバトがどんなものを食べているのかを紹介します。

目次

春から夏

まだ霜が降りる早春の頃は、四季の中でも一番食べ物が少ない季節になります。アオバトたちは、木の芽や花びらや若葉を食べて飢えをしのぎます。初夏になるとヤマザクラの実などが熟し、果実中心の食生活に切り替わります。

ウメの花

ウメ(引用)

ウメの花

引用元:みんなの趣味の園芸

ウメの木は広く人里で栽培されている木です。花は、品種によっては12月中旬から開花するものもあるそうですが一般的には2月~3月頃がシーズン。アオバトが食べるのは花の部分。花びらごと食べます。

アンズの花

アンズの花(引用)

アンズの花

引用元:みんなの趣味の園芸

アンズの木は人里で栽培されている木です。花も樹形もウメに似たような形をしていて、3月頃花を咲かせます。アオバトが食べるのは花の部分です。

モモの花

モモの花(引用)

モモの花

引用元:Wikipedia

モモの木は人里で栽培されている木です。花が咲くのは4月上旬頃。アオバトが食べるのは花の部分です。

ブナの若葉、芽吹いたばかりの雄花

ブナは北海道から九州まで、標高1000m~1500mくらいの低山帯に広く分布する木です。高さ30mほどの大きさに育ちます。

4月下旬~5月頃になると「若葉」「雄花」が芽吹き、アオバトはこれを食べます。(ブナの花は数年に一度開花するので、毎年見ることはできません)

サワグルミの花

名前に「沢」とあるように、沢沿いや谷の斜面に多く群生する、クルミの仲間です。4月~5月頃になると、細長く穂のように垂れ下がった花を咲かせ、アオバトはこれを食べます。

ヤマザクラの実

ヤマザクラはいろいろな品種がありますが、ここでは「山地に咲く桜の総称」としてヤマザクラをあげています。ヤマザクラは5~6月頃になると、直径1cmほどの小さなサクランボのような実が黒紫色に熟し、アオバトはこの実を食べます

コウゾの実

山間地の斜面に栽培されていたり、人里近くの林に自生したりしています。6月頃、つぶつぶした実が鮮やかな朱色に熟し、アオバトはこの実を食べます

ヤマグワの実

クワの実(引用)

クワの実

引用元:庭木図鑑 庭木ペディア

ヤマグワは、沖縄を除く日本全国の低山地帯に自生する木です。養蚕業が盛んだったころは、葉っぱをカイコの餌にするために里山にも多く植えられました。ヤマグワの実は、7月頃に赤紫色になり、アオバトはこの実を食べます

クマヤナギの実

沖縄を除く日本全国の丘陵地や山地に見られるつる性の木です。7月~8月頃に、赤黒く熟した実をアオバトは食べます

秋から冬

秋は実りの季節。10月頃までは大好きな果実が豊富にあります。11月頃になると、寒い冬にそなえて脂肪をたくわえるためか、どんぐり類を多く食べるようになっていきます。厳しい冬は、人里に取り残されたカキや、地面におちたどんぐりを探して飢えをしのぎます。

ウリノキの実

沖縄と九州の一部を除く、日本全国の低山地帯に分布する木です。湿気が多い環境を好むので、谷間などに群生します。高さは4mほどの低木です。10月頃になると、実が黒紫色に熟し、アオバトはこの実を食べます

ミズキの実

ミズキの実を食べに来たアオバト

ミズキは沖縄を除く日本全国に分布する木です。「水木」という名前の通り、谷沿いなど水が豊かな環境に生えます。公園の木として植えられることも多いです。8月~10月頃になると、実が黒く熟し、アオバトはこれを食べます

ミズキの実は他の野鳥や冬眠前のツキノワグマなども好んで食べる、多くの生きものに人気の実です。

ヤマボウシの実

ヤマボウシは、北海道と沖縄を除く日本全国の山地に分布する木です。公園や一般家庭の庭木にも利用されます。9月~10月頃、3cmほどの丸い実が赤く熟し、アオバトはこれを食べます。

カキの実

カキノキは、北海道と沖縄を除く日本全国の山地に分布する木です。主に人が食用として庭などに植える木ですが、低山に自生もしています。10~12月頃になると実が熟し、アオバトは、枝についたまま熟したカキを樹上でついばんで食べます。カキは、近年では収穫せずそのままにしている家庭も多いため、たくさんの野鳥や野生動物の食糧元になっています。

ピラカンサの実

ピラカンサは、主に生垣などに観賞用として栽培されている木です。公園や一般家庭の庭木に利用されます。12月~3月頃に鈴なりの実が真っ赤に熟した頃、アオバトはこの実を食べます

ドングリ(シイやカシなど)

11月上旬頃~冬の間は、シイやアラカシなどのどんぐりを食べます。樹上に成ったままのどんぐりを枝にとまって食べたり、地上に落ちたのを拾って食べます。どんぐりがなる木は公園に植えられることが多いため、冬期はこれらを求めてアオバトたちも山から平地にやって来ます。

いずれも丸のみして食べるのですが、まん丸で大きいクヌギのどんぐりは、さすがに大きすぎて食べられないようです。

アオバトの食べ物を知る

春は花や若葉、夏は果実、冬はどんぐり……。

野生の動物たちは、常に食べることに必死です。季節の移ろいを敏感に察知して、どの時期になったらどの実が食べごろになるのか、いつも感じながらして生きています。

アオバトは警戒心が強く、森にひっそり暮らす鳥と考えられがちですが、冬場は山から平地に来て、公園で人前に姿をさらしてどんぐりを食べるような姿も観察されています。

アオバトはまだまだ謎多き鳥ですが、食べ物を知ることで見えてくる姿もあるでしょう。

今回、この記事で紹介した植物は、アオバトが普段食べている植物のすべてではありません。もしも観察していて、これを食べているのも見た!ということがあったら、是非教えて下さいね。

※この記事は動物カメラマンの中川雄三さんと、都民の森野外利用指導員の方にご意見を聞き、作成しました。

中川雄三(動物写真家)
http://www.fujigoko.tv/nakagawa/index.html

東京都檜原都民の森オフィシャルWEBサイト
https://www.hinohara-mori.jp/

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この記事を書いた人

群馬県上野村のアオバト飛来地を管理、保全しています。希少な場所を通じて、アオバトや自然の大切さを伝えるために、完全予約制・少人数のガイドツアーを運営。

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